VMwareのデータセンター向け製品を個人で検証するためのTips
この記事は富士通クラウドテクノロジーズ Advent Calendar 2020の3日目の記事です。 id:yaaamaaaguuu が記事を書き、職場の先輩である id:hidemium さんからフィードバックを受けて加筆修正したものになります。(hidemiumさんありがとうございました。)
2日目はdaprでつくるマイクロサービスでした。daprが便利そうなことが伝わってくる記事でした。自分も後日試してみたいと思っています。
皆様にとって、2020年はどのような年だったでしょうか?
個人的には VCP-NV と呼ばれるVMwareの資格を取得するために色々と取り組んだことが心に残っています。
資格試験のためだけではないですが、自宅にVMware製品を導入した検証環境を構築してVMware製品を検証することが多かったため、そのまとめとして、VMwareのデータセンター向け製品を個人で検証するためのTipsを紹介することで、個人で検証するためのハードルを下げることができたら良いと思っています。
目次
- 目次
- 注意事項
- とにかく手早く設定方法などを確認したい
- とにかく物理で動くESXiを用意したい
- 物理環境でなくてもいいからESXiを用意したい
- 個人の検証環境にもvCenterやNSXを用意したい
- 複数の物理マシンを用意してvSphere + NSX + α を動かしたい
- vCenterをESXiにさっとデプロイしたい
- NSX Managerが起動できない もしくは NSX Managerを起動するとほかのVMが起動できない状況に対処する
- NSX-T のマネージャーでスナップショットをとりたい
- まとめ
注意事項
あくまで検証用途です。本番環境で今回紹介するTipsを適用すると、本番環境でサポートされなくなる可能性のある手法も含みます。筆者宅の検証環境などで試していることが大半ではありますが、試す際はご自身の責任でお願いいたします。
とにかく手早く設定方法などを確認したい
VMwareが用意しているHands on Labを利用しましょう。
利用したい製品がデプロイされるHoLを起動し、用意してあるトレーニングのメニューを無視して、 自分の確認したいことをさっと確認してみる、というのは新しい製品で検証環境が十分でないときに有効な手段です。
とにかく物理で動くESXiを用意したい
ESXiはMyVMwareに登録したらisoをダウンロードできたと思うので、そちらを利用すると良いです。
ネットワークの構成や性能にかかわらず、物理のESXiを用意したい場合は、IntelのNUCを購入しESXiをインストールするのが良いと思います。なぜIntelのNUCを推すかというと、William Lam 氏のブログ https://www.virtuallyghetto.com で頻繁に推されていて、 動作確認がされていることが多いからです。もし将来的にvSANなどを検証したい場合は2.5インチベイがあるほうを選ぶと良いです。
NUCなどを利用していてPCIeなどで物理NICを拡張することができない場合や、適当なコンピュータのマザーボードのNICがESXiに対応していない場合はこちらのDriveを導入してUSB NICをつかうことになります。USB NICは製品によってサポートされるMTUの上限が異なるポイントに注意してください。(自分が複数購入したものは4500程度でした。)
個人的には試せていないのですが、 (1台あたりの価格が通常のNUCよりだいぶ高価ですが) Intel NUC9 extreme を利用するとNICの構成の問題を解消できると思います。
またx86にこだわらない場合、Raspberry piなどで試せるESXi Arm Editionなどが選択肢に入ってくると思います。
物理ノードのリソースは、システム要件 (+お財布事情) に沿って用意していただくのが良いですが、vCenter,NSXの検証でCPUのリソースの実消費は比較的少ないのに対し、メモリの実消費は比較的多いことに注意する必要があります。
具体的な話をすると、筆者の検証環境は、core i3-6100U, 32GBのメモリのNUCが3台構成のところにvCenter/NSX-T Managerをデプロイ、HAとvSANを有効にしている状態で以下のようなリソース状況です。
本番環境では互換性のある物理サーバーを用意してください。
物理環境でなくてもいいからESXiを用意したい
物理のマシンにESXiをインストールする以外に、ESXiを仮想マシンとして用意する方法があります。ネステッド もしくは ネスト と呼ばれています。物理のESXiの上にNested ESXiをデプロイして、Nested ESXiの上に仮想マシンをデプロイして色々試すことが可能です。試したことはないですが、VMware のWorkstationやFusionで動作させる方法もあるようです。
Nested ESXi を用意するには2つ手法があります。
- ESXiのisoを利用して仮想マシンにインストールする
- William Lam 氏が公開しているNested ESXiのovaを利用する
上記の2つの方法のうち、前者に取り組むことは勉強にはなりますが、用意するのに割と手間がかかります。Lam氏の公開しているNested ESXiのイメージが非常に実用的なため、そちらを利用するとよいでしょう。ただし、公開されているovaのハードウェアバージョンが比較的新しいため、 場合によっては自分でisoから用意する必要があります。
Nested ESXi を稼働させるにはいくつか気をつけたほうが良いことがあります。
- https://kb.vmware.com/s/article/2009916?lang=ja にも記載がある通り、 Nested ESXiはサポートされないので、本番環境で利用しない方がよいと思います。
- Nested ESXIに与えるCPUやメモリは、ESXiのシステム要件に準拠すると良いのですが、NSXを動作させるためのESXiとしてNestedを利用する場合は、8GBのメモリは与えたほうが無難です。
- Nested ESXiが接続する仮想スイッチの設定については Why is Promiscuous Mode & Forged Transmits required for Nested ESXi? を読むと良いです。
- Nested ESXiをクローンする前に、How to properly clone a Nested ESXi VM? を読むと良いです。
個人の検証環境にもvCenterやNSXを用意したい
あくまで個人向けの検証用途の話です。
VMUGのAdvantage のライセンスを利用するのが良いと思います。値段は$200/year (2年継続だと $180/yer, 3年継続だと $170/year)だそうです。
2020/12/02 だと、vCenter, NSX-v, NSX-T, vSAN, Tanzu などに加えて、
VMware FusionやWrokstationのProなどがダウンロードできるライセンスとなっています。
前述のNUCなどにESXiをインストールするか、Fusion/Workstationで各アプライアンスを起動して検証する形になると思います。
複数の物理マシンを用意してvSphere + NSX + α を動かしたい
各種vSphereやNSXの機能の利便性を実感するには、複数のESXiがある方が良いケースが多くあります。そして複数のESXiを用意して検証をするには最低限スイッチとNASではないかと考えています。
- スイッチ
- EdgeRouter Xをスイッチとして採用している話をよく伺います。
- NAS
- SynologyかQNAPのNASを採用している話をよく伺います。
- vSphere のHA や vMotionを試すには必須です。
宅内検証環境の物理構成の詳細に言及し始めるとキリが無いので、この記事ではこの程度にとどめます。
vCenterをESXiにさっとデプロイしたい
vCenterをESXiにさっとデプロイするには、isoからGUIのインストーラーを起動するのが一般的ではあると思います。
ただ、vCenterをインストールする際のパラメーターは決まり切っているので、
検証の際に何度もいちいちGUIでパラメーターを埋めて...というのは面倒な気がします。
そんな時は、govc をつかって、vcsaのアプライアンスをデプロイすると良いです。
# iso をmountする, ディレクトリは適当 mount -t iso9660 VMware-VCSA-all.iso /mount_dir # iso 内のvcsaのovaからインポート用の情報を生成する govc import.spec /mount_dir/VMware-vCenter-Server-Appliance-xxxx_OVF10.ova | jq . > vcsa_import_spec.json # vcsa_import_spec.json を適切に編集する # guestinfo.cis.deployment.autoconfig = "True" にすると、 # vcsaを起動後にパラメーターに沿って自動的に設定してくれます。 # https://www.virtuallyghetto.com/2016/10/how-to-deploy-the-vcenter-server-appliance-vcsa-6-5-running-on-vmware-fusion-workstation.html が参考です。 # import.ova には適当にデータストアやデプロイ先を指定するオプションが必要です。 govc import.ova -options=vcsa_import_spec.json /mount_dir/VMware-vCenter-Server-Appliance-xxxx_OVF10.ova
こちらの方法はVMwareのドキュメントに記載があるものではないので、あくまでデプロイを簡易にする非公式手順であることに留意してほしいです。
NSX Managerが起動できない もしくは NSX Managerを起動するとほかのVMが起動できない状況に対処する
NSX-T Managerもovaをデプロイ直後はメモリのリソースの予約 (手元の環境で見ると16GBのメモリ) が入っています。検証環境のリソース状況によっては、NSX Managerが起動できないケースや、NSX Managerが起動できても他のVMが起動できなくなるなどが考えられます。
リソース不足起因のトラブルを踏まないようにするためには、検証環境のリソースを増強するのが良いのですが、暫定的にはNSX Managerのメモリの予約を外してしまうことでNSX Managerや他のVMが起動できなくなることを回避できます。
商用の環境でNSX-T Managerのリソースは予約は外さないでください。
NSX-T のマネージャーでスナップショットをとりたい
NSX-T Managerはスナップショットをサポートしていません。そのためにアプライアンスでスナップショットを無効にする方法 がドキュメントに記載されています。またNSX-T 3.0.1 以降ではスナップショットが取れなくなるための設定が予め入っています。
しかし、個人の検証レベルではサポートを受けられるか否かよりも、例えばテキトウにスナップショットを取ってアップデートを実施してみるなどの気軽さのほうが大事な気がします。ということで、ドキュメントに書いてあることに逆らうことにはなりますが、仮想マシン オプションから snapshot.MaxSnapshots
を必要に応じて編集すると良いと思います。
まとめ
VMwareのデータセンター向け製品を個人で検証するためのTipsを記載しました。何かの参考になれば嬉しいです。
今回のTipsは個人向けということで、ドキュメントの互換性や手順などを、思いっきり無視しているモノとなります。
間違っても商用の環境で試すなどはしないでください。
この記事は富士通クラウドテクノロジーズ Advent Calendar 2020の3日目の記事でした。
明日の4日目はGit Hooksでうっかりミスを防ぎたいだそうです。gitのhookは非常に便利なのでどのような記事が投稿されるのか楽しみですね。